その163

真っ暗なうちに目が覚め、まどろむ。空が青くなってくる。起きる。昨日ほど低くなく、結露も少ない。テント内で栄養いっぱいのお菓子を食べる。テントをたたむ。ビーチで顔を洗い、水を汲む。水面のすぐ上空は霧で真っ白。シェルパさんたち何人かのハイカーが焚き火をして、ご飯を食べている。わたしたちも火にあたってあたたまる。

歩く。登りの途中で体があたたまり、ウィンドジャケットを脱ぐ。気持ちのいい広葉樹の森を歩く。休み、穴を掘って出す。快便。池に出て、池のふちに沿って歩く。水は透きとおっている。風がなくて静か。風が出て、森がざわざわという。木がぎぎーっと音を立てる。また池に出て波が立っている。水が打ちよせるちゃぷちゃぷという音を聴きながら歩く。池をはずれ、赤土の、針葉樹の落葉が敷き詰っている森を歩く。苔の緑と土の赤が同居している。

のらさんとわたしのお腹がぐうぐう鳴ってお互いによく聞こえる。クラッカーを食べる。行動食を少しだけ食べる。あんまり量を持っていないので。

お昼。薄平パンは大きいサイズ、落花生バターもチーズもがっつりのせ、これを1枚半ずつ食べる。デザートにキウイ。

ほとんど話をせず、黙々と歩く。それから、明日朝のパンケーキの朝食を食べるか否か?という話をする(今日泊る予定のテント地近くに宿があり、パンケーキ12枚の朝食あり。朝食のみでも可だが前日までに予約が必要と書いてある)。しかし明日はカヌーで川を渡るところがあって、その兼ね合いが難しい(カヌーでハイカーを運んでくれるというサービスがある。しかしカヌーは一台しかないから、遅くいくとけっこうな順番待ちになりそうである)。次の町におりるタイミングもある。この話ばかりになる。

わたしはまた腹が減っている。「けっこうストックを持つ手に力を入れていて足の負担を減らしているつもりなんだが、これだと全身運動になって、余計にカロリーを消費しているんだろうか?もっと楽な歩き方があるんだろうか?」

「歩いていると周りの風景が見れないよね」とのらさん。「足もとが7、前が2.5、周りが0.5くらい」とわたし。

緑の森、赤い森、小さな岩のごつごつした道、新しい木道(今年つくりかえているようである)、古い木道(足をのせると木が動く。2人同時に乗るとあぶない)。アビの鳴き声がきこえる。リスがぎぎぎとうるさい。

道は勾配なくまっ平ら。わたしはさくさく歩いているつもりだが、つっかけたり置き場が悪かったりでぎこちない。のらさんは顔がむくんでいる。これは調子が悪い証拠。「体に力が入らない」と言う。わたしも疲れがたまっている。以前より1日に歩く距離もおさえぎみ、しかもちょくちょく町に降りて休んでいるのに、疲れがたまっている。「高い山が終わったから、気合いが入らないのだ。気が抜けているのだ」

16時、小屋に着く。池のすぐほとり。テントを張る。わたしたちの後に、続々とハイカーがやってくる。のらさんは「歩いている間は熱があるのかもと思った。朝食の予約に行くのすらめんどう」と言うので、明日パンケーキは止めることにする。今日はここでじっくり休み、早めに寝ることにする。

池の水を汲む。ここの池は色々なものが浮いている。味はまずい。夕めし。じゃがいも(昨日と同)、ご飯(昨日と同。ハーブバター味でわかめを入れても味が変わらない)。めし前に着替えてダウンジャケットでぶくぶくになり、あついものを食べて体があつい。青汁とビタミン剤。食料袋を吊るす。ここは着いた時からずっとリスが走り回っているリスの森。雨除けのためにビニールをかぶせる。蚊に刺される。気温が下がらない。のらさんは暗くなる前に眠る。何かがぅお~ぅと鳴く。 

寝袋に入ってから、あつくてダウンジャケットを脱ぎ、靴下を脱ぐ。靴下を脱いだらキネシオテープが貼られている所がかゆくてぼりぼりとかく。あまりにかゆいのでとってしまおうとするが、がまんしているうちに眠る。