その159

ぐっすりと眠り、目覚め、起きる。わたしのウールのティーシャツ生乾き。のらさんが乾燥機にかけてくれる。

朝めし。居間のテーブルで玉ねぎパン、マフィン(フレンチトースト味)、ヨーグルト、ゆで卵を食べる。コーヒーを飲む。2人とも、便所に行って出す。荷物を荷物室まで運び、そこで荷物を詰める。

チェックアウトし、車に乗り込む。カササギフエガラスさんたちと同乗。トレイルの入口に戻り、歩きはじめる。晴天。ゆるやかな登り。のらさんは久しぶりによく出たと言う。わたしはぐっすりとよく眠れた。「アルコールのおかげだ。多少のアルコールが潤滑油になるんだ」「アルコールは硬いものを柔らかくしてくれるんだ」

小屋を過ぎ、池を過ぎてから急坂。途中から高山地帯入る。松のような木がだんだん低くなり、やがてほとんどなくなってむき出しの岩歩きになる。空は雲ひとつない、真っ青。なだらかな山がどこまでも。その合間に池と湖。今朝まで過ごした町が見える。

正面にこんもりとした丘。これから進む道すじがはっきりと見えている。「あれが山頂だな」と思いつつ登り、もうほとんどそこに辿り着こうかという時に、その先にまだこんもりとした山が続いているのが見え、ここはまだ中腹であることに気が付く。次のこんもりに近づくとそのまた向こうにこんもりが見えて・・・という地形。

高度が上がるにつれ、風が強まってくる。幼稚園児のように、帽子のひもをあご下まできつくしめる。

山頂に辿り着く。低い木が密集するように生えていて、風が避けられるところで昼めし。ピタパンと揚げとうもろこしのスナック。ピタパンの中にスナックを入れるのではなく、交互に食べる(口の中で混ぜ合わせる)。

わたしたちの前を、若い女の子3人組みがゆく。ゆっくりとしたペース。追いつき、立ち止まって待ち、追いつく、というペースで歩く。やがて登り坂になり、ここでもやはり追いつき、立ち止まって待ち、追いつく。

このペースに疲れたので、木々が点々とある岩場の山の中腹で荷を降ろして休む。のらさんが小便をしに行き「上からも下からも丸見えだ」と言う。

山頂を越えて下りはじめ、また女の子たちに追いつく。女の子たちは岩場でもストックに頼りすぎていて危ないし遅い。岩に座り込んで慎重に足を下ろすので遅い。後ろで立って待っているわたしをたまに上目でちらっと見るので、わたしが待っているのには気づいている。しかし前に行かせようとはしない。

わたしは先に行かせてもらうよう頼むタイミングを窺っているが、狭い岩場では声をかけにくいし、たまの平坦な道だとすたすたと行ってしまう。たびたび後ろで立って待っているのと、自分のペースで歩けないことにストレスを感じはじめる。立って待ってると、のらさんに「もう少し離れたほうがいいよ。近寄り過ぎだよ」と言われる。

そのうち女の子の1人が岩場でずるっと滑って転び、足をひねったようで立ち上がれない。近寄って「大丈夫?」と声を掛けるがあまり反応はない。この子たちはすれ違ってもいつも無表情。 

わたしたちは先に行かせてもらう。しかし女の子が転んだのはわたしのプレッシャーを感じていたせいもあるのかもと思って、申し訳ない気持ちになる。

登り坂。今度はゆっくり登る男性ハイカーに追いつく。男性のペースで登る。山頂付近で休み。「ピタパンにサバをいれたらうまいだろう」という話。

小屋で休む。カササギフエガラスさんたちがいる。もう1人いた男性ハイカーの五つ星さんは、わたしたちと「ビーチのあるでっかいキャンプ施設で会った」と言う。のらさんは彼と「ピザ屋と食料品店がくっついた建物の所で会った」と言う。わたしはまるっきり覚えていない。

下り坂。岩と木と根の登り。それほど急ではない。黙々と歩く。下りきったところにある川で水を汲む。また女の子3人組がやってきて慎重に川を石づたいに渡るが、危なっかしくて見られない。

川の直前にあった平らな所にテントを張ることにし、来た道を戻る。テントを張り、夕めし。ピタパンにツナとくだいたスナックを入れたもの。食感がよろし。ハーブバター味ご飯にご飯を足したもの。薄味のご飯。おじやのよう。食べ終わる頃には暗くなる。日記を書く。のらさんは眠らずガイドブックを熟読している。いとうせいこうさんのラジオ番組を流すがすぐに眠る。