その23

起きる。メープルシロップ味の麦粥とナッツ菓子を食べる。水を汲む。歯を磨く。便所で出す。
 
歩く。空は曇っている。いつもぴいぴい鳴いている鳥が鳴かないので山が静か。
 
うしろを歩いているのらさんの気配を感じない。「眠いの?」と訊くと「どうして分かったの?」と言う。

薄平パンにヘーゼルナッツとココア味の甘い塗りものを塗りたくって食べる。粗塩ビスケットを塗りもののなかに突っ込んで食べる。
 
歩く。小さな滝の下で水を汲む。ビスケットを食べる。小屋で荷物を降ろし、その近くで水を汲む。雨雲が近づいてきているのが見える。食糧が多く荷物が重い。肩の痛みに耐えながら歩く。
 
夕方近くになり、峠に大きな高速道路があって車がびゅんびゅんと走っている。その下をくぐる舗装路を歩いていると、向こうからやってきた車が私たちの前にが止まり、小柄なおばさんが出てきてビスケットとヨーグルトをくれる。すると近くの駐車場からわらわらと人がやってきて私たちにチョコレート菓子や飴やバナナやりんごや水をどんどんくれるのである。ついさっきまでハイカーをもてなすパーティーをしていて、その余りものだと言った。私たちはまったく断ることなく、両手に溢れるほどの物を受け取った。

貰ったものはザックに入りきらないので、ザックの外にぶら下げて背負う。今までで一番の重さ。ぶら下げた袋が歩くたびにぶらぶらと動くので、その重さで体が左右に振れる。
 
平らな場所を見つけてテントを張っていると雨が降りはじめる。雨のなか傘をさしてスパイシーな味わいのごはんをとろとろと煮込む。雨で跳ね返った泥で足元がどろどろ。体が冷えるばかりなのでりんごとチョコレート菓子とヨーグルトを食べる。
 
セバスチャン君とロバート君がずぶ濡れでやってきた。彼らはすばやくテントをたて、ナッツとチョコレートが混ざったものを口に流し込んで夕食を済ませる。先ほど貰ったものを彼らと分配する。4人分の食料袋をいっぺんに木にぶら下げようとしたら、重すぎてロープが引っ張れない(食べ物というのはとても重いものなのだ)。結局、別々にぶら下げた。