その77

薄暗いうちに起きる。しとしとと雨。黒いごみ袋の底を切り、雨用スカートにする(カッパ下は段ボール箱のなかに入れてしまった)。

歩きはじめる。スカートは脚さばきがよく、蒸れずに快適。雨のなかを歩くのは久しぶり。霧が出てあたりが白くなる。次第に小雨になる。倒木に座って栄養いっぱいのチョコレート菓子を食べる。雨が止んだところでカッパとスカートを脱ぎ、穴を掘って出す。薄着になり、腹のなかのものも無くなり、体が軽くなる。

以前に何度かあっている、わたしたちよりずっと足の速いハイカーとすれ違う。ここから電車で1時間くらいのところには大都会があって、そこで何日間か遊んできたと言う。都会でリフレッシュするハイカーはけっこういる。「今大都会に行ったらすごいおろおろするんじゃないかと思う」「店が多すぎてどれに入るか決められんだろうな」

駐車場や便所のある、きちんと整備されている公園に出る。ザックを開けると、テントの袋から水が滲み出ていてザックの中が水浸しになっていた。芝生のうえに濡れているものをひろげて乾かす。

公園のベンチに座り、薄平パンに落花生バターを塗ったもの、麦粥に栄養いっぱいの白い粉を入れたものを食べる。落花生バターをそのまま舐める。お汁粉の汁を飲む。芝生のうえに横になって少し眠る。

歩く。石造りの塔が現れる。塔の上に昇って眼下の町並みが眺められるようになっているが昇らずに済ます。

トレイルは広くなだらか、岩でごつごつしていないから下を見ず、前を向いて歩ける。森を眺めながら心地よいペースで歩く。

大量の車が走り抜ける高速道路の上に掛かっている橋を渡る。橋は金網の柵で覆われており、柵にはチョコレート菓子がいくつか突き刺さっている。これは誰かがハイカーのために置いていってくれたのだと判断して頂く。「知らない人からお菓子もらっちゃだめだ、って言われて育ったんだけど」とのらさん。

倒木に座って休む。穴を掘って出す。

歩いていて、臭い匂いから逃れられない。ストックのバンドと、握る部分が悪臭を放っていることに気づく。靴下も同じように悪臭。雨に濡れて生乾きのものはすぐに臭くなる。

まだ陽が高いうちにキャンプ場に着く。すでにいくつかテントが張られていて、親子連れなどがキャンプを楽しんでいる。テントを張るスペースはどこも斜面。雨が降ったら水が溜まりそうなので雨が降らないよう祈りながらテントを張る。空が急にどんよりと曇ってくる。沢で水を汲む。

ツナ入りじゃがいも、メキシコ味と書かれているがインドを思わせるスパイシーなご飯に乾燥野菜とにんにく。水場で足と靴下を洗う。のらさんは「この臭い匂いが懐かしい。しばらく雨に濡れてなかったから」と言って洗わない。

するべき事をし終わってもまだ外は明るい。のらさんは英語の勉強をはじめるが「10分経ったら起こして」と言って横になって眠る。起こすと目が開いて、またすぐに閉じて眠ってしまう。薄暗くなってから雨が降りはじめる。