その25

夜明け前、まだ暗いうちに起きる。麦粥とナッツ菓子を食べる。キャンプ場からしばらく山の奥に入ったところに穴を掘って出す。

歩く。のらさんも穴を掘りに行く。のらさんはいつもたっぷり食べているが、出る方はなかなか出ない。お腹がうまく働いていないのか、それとも食べるもののあらゆる養分を体に取り込んでしまって、出るものが少なくなっているのだろうか。

下り始める。はるか下のほうに大きな茶色い川と、その向こうにたくさんの家屋が建っているのが見える。車のエンジンの音とクラクションの音が大きくなってくる。

トレイルから舗装路に出た、そのすぐ脇に宿があった。ハイカーばかりが泊まる宿。ハイカー達は上半身裸で寝そべっていたり、お菓子をぽりぽり食べながら喋っていたり、ウクレレをぽろぽろと弾いていたりしておよそハイカーのようには見えない。しかし、歩き続けるには一定の休息が必要でもある。

宿の中庭の芝生で、寝袋や濡れているテントを広げて乾かす。体にお湯を浴びせる(石けんがない)。衣類を洗濯をして干す。
我々と共に旅する段ボール箱を受け取る。中身を入れ替える。

10人くらい乗れる車がやってきて、そのなかにハイカーがぱんぱんになるまで乗り込んだ。みんなで食べ放題のピザ屋に行くのだ。
ピザ屋に着くと、ひと足先に来ていたロバート君とセバスチャン君とバンダナ君と煙突君が店の前で倒れ込んでいる。食べ過ぎて動けない様子。
私たちも店に入り、まずは生野菜をたっぷりと食べ、それからおもむろにピザを食べ始める。このピザは、そのほとんどがパンであって、そのうえに少しのチーズと、さらにごくごく少しの具がのっているもの。しかしもちろん、私たちにとっては充分満足できる味。わたしたちはそれを食べ、さらに食べ、もうほとんど胃に収まりきれないという一歩手前で食べるのをやめた(私たちは成長した)。

宿に戻り、アイスクリームと揚げじゃがいもを食べてからまたに車に乗り込む。今度は食糧の買い出し。
大型のスーパーマーケットで今日の夕食分と6日分の食糧を買い込む。迎えの車を待っていると空がもくもくと曇ってきて、やがて土砂降りの雨になった。「すごい雨だあ」と口では言っているものの、いま私たちは屋根のある建物の下にいるので、とくに何とも思わないのである。

宿に戻り、外に干していてずぶ濡れになった衣類を部屋で乾かす。部屋でハムとレタスが挟まった大きなサンドイッチと電子レンジで作れる焼きそばを食べ、ビールを飲む。のらさんがコーヒー酒というものを買っていて、それを牛乳に入れて飲む。この部屋は四畳半くらいの大きさで、そのほとんどを大きなベッドが占めている。あとは冷蔵庫と戸棚とテレビがあって人が過ごす場所がない。ものはぜんぶ埃をかぶっているし、電子レンジの皿にはシロップのようなものがべったりと付いている。ベッドのシーツもあまりきれいには見えない。「これなら芝生でテントを張った方が値段は安いし清潔だ」とわたしは言う。シーツの上に寝袋を置いて、その中に潜って寝る。ハイカー達が外で喋っている声がいつまでも聞こえている。