その17

夜中、小屋のなかは寒い。たびたび目がさめる。特に足の先が冷える。足を伸ばすと寝袋のいちばん奥がひんやりとしていて足の冷えを感じるので伸ばせない。足を曲げたまま寝るというのは苦痛。しかしのらさんの股に足を突っ込むと大変暖まる。お互いの足をお互いの股に突っ込みあう。聞こえてくるいびきは音調が変。人種の違いか。
 
日の出とともに起きる。とうもろこし粥と薄平パンと落花生バターを食べる。水を汲む。たっぷりと飲む。便所に行って出す。気温が低いせいか蠅がいない。
 
はじめの2キロメートルほどを、バンダナ君と一緒に歩く。バンダナ君は膝を痛めていると言う。ゆっくりゆっくりと歩く。
 
今日は日曜日。週末のハイキングを楽しむ人々でトレイルは賑わっている。
 
木陰に座りチョコレート菓子と塩気たっぷりのビスケットと落花生バターを食べる。水をたっぷりと飲む。
 
しばらくの間、山の稜線上を歩く。左右のどちら側も、遠くの山々まで見わたせる。久しぶりの青空で太陽が近い。しかし標高が高いから涼しい。
 
今日はふたりとも悪いところがない。体が元の調子を取り戻した。歩き始めた時のように楽しい気分。
 
簡易小屋に着く。人がたくさんいるのでテントを張る。テントは2日前の雨でずぶ濡れのままである。しかしテントの中に入ると我が家に戻った落ち着きを感じた。
 
味噌汁仕立ての玄米汁、ツナとじゃがいもを混ぜたものをたべる。野菜汁を飲む。背中に大仏の彫りものがはいっている陽気なオンタリオ君からクッキーをもらう。
 
のらさんがヘッドランプを無くした。おそらく小屋に忘れてきたんじゃないかと言う。のらさんはがっかりして寝てしまう。そのあとで寝袋のいちばん奥から出てきた。