その16

テント内で結露した水がわたしの額にぴちっ、と垂れてくる。そのたびに目がさめる。

明るくなってから起きる。とうもろこし粥と薄平パンと落花生バターを食べる。
 
濡れたテント内を拭く。寝袋も濡れているので拭く。水を汲む。手がかじかんでうまく動かないからゆっくりと作業をする。
 
歩き始める。昨日と同じく、足取りが重い。前を向くとくらくらする。平衡感覚を失っているようで歩きづらい。うつむきながら歩く。
 
出す。久しぶりである。手がうまく動かないので、ゆっくりと穴を掘り、ゆっくりと為す。
 
今日になって突然「水を飲み足りないのが調子が上がらない原因なのでは」と思い立ち、たくさんの水を飲む。手がかじかんだままで温まらないので、のらさんの手袋を借りる(わたしのは昨日の雨で濡れたままである)。
 
出すべきものを体から出し、水をたくさん飲んだせいか、俄かに体が軽くなって足が動くようになった。くらくら感覚もなくなる。ナッツとチョコレートと梅干しを食べつつ、さらに水をぐびぐびと飲んで歩く。
 
休憩する。あら塩がついたビスケットにたっぷりの落花生バターを塗って食べる。
 
霧が晴れず、周囲が真っ白のなかを歩く。雨は降らないが、冷たい風が吹く。
 
苔むした大地、太くて大きな木々に濃い緑が茂る。深い森に浸りながら歩いていると、とつぜん舗装路が出てきてがっかりする。その先にはコンクリートで造られた螺旋状の展望台がある。近くに駐車場があるようで軽装の人がちらほら。霧で展望はない。
 
今日はのらさんものぼせたりせずに調子よく歩く。のらさんも水が足りていなかったのかもしれない。
 
簡易小屋に着く。まだ5、6人しかおらずスペースが空いているので、小屋内に泊まることにする。小屋は三方が石垣で組まれ、一方はビニールシートで覆われている。屋根はトタンが被せてある。二段に木の板が組まれていて一段に6人ずつ寝られる空間がある。暖炉があるが風が抜けて寒い。
 
アメリカ南部味の玄米汁と潰したじゃがいもと干し牛肉を食べる。バンダナ君がやってきた。日本人3人が並んで寝る。