その102

夜中、目覚める、志ん生を流す、寝る、目覚める、志ん生を流す、を繰り返す。

明るくなりはじめた頃に起きる。テントをたたむ。昨日溶けたチョコレート混じりのナッツとビスケットを食べる。

歩く。眠く、体が重い。栄養いっぱいのチョコレート菓子を半分ずつ食べる。

湿地帯が乾いて草原になっているところに架かっている長い木道を歩く。昨日より風が吹いていて、からっとしているので歩いていて気持ちがいい。木道の途中にあるベンチを座って休む。綿毛が宙を舞う。

車道に出る。畳二畳ぶんくらいの掘っ建て小屋があり、そこでホットドッグを売っている。椅子に座り、風に吹かれながらレモン紅茶を飲む。薄揚げじゃがいも、焼き玉ねぎと酢きゃべつ入りホットドッグを食べる。掘っ建て小屋に次から次へと車が乗り付けられ、ホットドッグを持って出て行く。皆必ずホットドッグをふたつ買っていく。

店の前でヒッチハイクをする。ここは田舎道だが車通りが多い。何台か通り過ぎた後に中型の四輪駆動車が停まり、町まで乗せてもらう。乗せてくれたおばさんは、わたしたちがこれから向かおうとしている教会のことをよく知っており、教会の前まで乗せてくれ、さらに部屋や洗面所や台所など、建物のなかをひと通り案内してくれてから帰って行った。

ここは教会のなかの部屋をハイカーが泊まれるようにと、開放されているところ。なかは無人で、パソコンを使って自分でチェックインの手続きをし、部屋を使う上での規則が書いてある張り紙をよく読む。絨毯が敷かれた12畳くらいの広さの居間にソファやテーブル、テレビが置かれており、サーキュレーターが回っていてとても清潔である。寄付金を箱に入れ、掃除をするようにと書かれていたのでのらさんは居間の絨毯に掃除機をかけ、わたしは洗面所の床を拭く。冷蔵庫のなかのものを楽しんでと書かれていたので、いちごジャムのパイと牛乳を頂く。

熱いシャワーを浴び、体の垢をおとし、爪を切る。衣類を洗濯機で洗い、乾燥機にかける。

スーパーマーケットに行く。一週間分の食糧を買う。スーパーマーケットは冷房が効き過ぎで冷蔵庫のよう。外の椅子に座って揚げ鶏肉を食べる。

教会に戻ってバックパックを洗濯機で洗う。杖と靴の中敷を洗剤をつけて手洗いする。汚れは取れないが、臭いはなくなったようである。サーキュレーターの前に置いて乾かす。ベーグルを食べ、コーヒーを飲む。

ピザ屋に行き、トマトとモッツァレラとバジルのピザを食べる。商店でアイスクリームとコーヒーを買う。

教会に戻る。ドッジボール大会で男どもが闘うという内容の映画を流し、風呂上がりのハイカーたちが腰にタオルを巻いただけの格好やパンツ一丁でそれを眺めている。

昼間はわたしたちしか居なかったが徐々にハイカーが到着し、全部で10人ほどになる。ここでみんなでごろ寝をするのだ。居間のとなりは台所と食堂になっていて、食堂の隅に寝袋を敷いて横になって眠る。