その46

明るくなってから起きる。ナッツが入ったバナナ味の麦粥と、たんぱく質たっぷりの菓子を食べる。

穴を掘って出す。うんこから湯気がたっている。のらさんに報告する。「うんこがほくほくしてたぞ。漫画みたいだ」「体温と外気がそれほど違うということだね」

歩く。川で水を汲む。車道を超える。

薄平パンに落花生バター。今日の薄平パンは全粒粉で粘り気がなくぼろぼろと地面に落ちる。トレイルに食べものを残せないから、ぜんぶ拾ってごみ袋に入れる。

標高の低い、平坦な道。枝分かれしている川が無数に流れる。ぬかるんでいるところを避けつつ、またはべちゃべちゃと靴下の中まで水浸しにしながら歩く。木橋を渡り、石伝いに飛び越え、ぬかるみの道を進む。「標高のひくいところはじめじめして、木が茂っていて、暗い。早く高いところに戻りたい」しかし高いところに戻るにはきつい登り坂を登らなくてはならない。

ぬかるみの道は、着地した足がぬるっとすべって余計な力を使うし、踏ん張る必要があるから、足に負担がかかる。加えてのらさんは、先週買った靴のサイズが大きすぎ、靴の中でも足が動いてさらに余計な踏ん張りが必要。足の親指の付け根の痛みがひどくなり、歩くのが辛そうである。「次に靴が売っているところで買い換える。服はどんなものでもなんとかなるけど、靴はそうはいかない。靴代はケチらないことにする」とのらさん。そのあとでトレイル上に倒れていた木につまづいてぬかるみでどさっと転んだ。

急な登り坂、途中で水を汲み、また急坂。のらさんのペースが上がらない。登りきってちょっと歩いたところでキャンプをすることにする。

食事の準備をしている途中で雨が降り始めてがっかりする。「毎日めしの時間に降りやがる」とわたしは言う。

潰したじゃがいもに、揚げ玉ねぎ、乾燥トマト、サラミ、ピンク色の鮭肉、アメリカ南部味の香辛料を混ぜあわせ、薄平パンで巻いて食べる。明日は町に降りる予定なので、あまった食材をぜんぶ食べてしまう。「今回は多めの食材を持って、どれだけ余るのか試してみたけど、あればあるだけ、べんぶ食っちゃったな」

そのあと乾燥米のドライカレーを食べる。食べ終わると雨が止んで日が差した。

穴を掘って出す。のらさんも。のらさんは便秘が続いているが、今日は出たというので二人で喜ぶ。「トレイルに来て思ったのは、食べることと出すことは同じくらい大事だという事だ。たくさん食べて背負う食糧が減っても、出すものを出さなきゃ足にかかる負担は一緒。便通をちゃんとしなければ真の軽量化とは言えない」

のらさんは爪を切り、サッサフラスの樹皮を剥く。わたしは突っ立って木と木のあいだに沈む夕陽を眺める。「山の上でキャンプして過ごすのはほんと楽しいなあ」「いつまでそうやって言っていられるかな?」「もうじき2ヶ月経つけどぜんぜん飽きないぞ。おれたちは毎日遊んで暮らしている。すごいことだ」